歴史を繋ぐ男

今年初のナイターでアルコールをしこたま蓄えたせいでカントリーロードの音色が響く辺りから私の記憶は殆ど無かった。


でも、今のチームで唯一「緑の時代」を知るモヤシ王子のゴールが私の感情を揺り動かしたことだけはハッキリと覚えている。


他にもロスタイムで決めて喜びを爆発させたことは何度もあるけど、今回は喜びじゃなく、感動しました。心で泣きました。


試合後の記者会見で敵将・リトバルスキー

「監督としては悔しいが、千葉が得点したことは嬉しかった。」

とコメントしていたそうです。


リトバルスキーと言えば96年、「昇格への切り札」として迎え入れられ、緑のユニフォームに袖を通した。
が、チームは迷走に次ぐ迷走で昇格はおろか、チーム存亡の危機にまで立たされた。
リティを始めとした主力選手の殆どがその犠牲として志半ばで仙台を去らざるを得なかった。


横浜FCにはリティ以外にも阪倉、真中と当時の「暗黒時代」を知る人間が数多く集まっている。
正直言って彼らは仙台では何一ついい思い出など無いはず。
結果を出せなかったことは勿論、退団する時にフロントからも相当に不当な扱いを受けたことが
決定的に印象を悪くしていると思う。(この場では多くは語らないが、機会があれば当時のことにもじっくり触れて行きたい)。


仙台のことなんぞいくら憎んでも足りない存在だろう。01年の三ツ沢*1でもその執念を恐ろしいほど肌で感じた。


でも、申し訳ないが、1人のしがないサポーターの立場から言わせて貰えば
あんたらがしっかり結果を残していれば、もっと早く昇格出来たし、後に味わう苦労も少なかった、とも思う。
彼らが仙台に対して執念を燃やすように、私も当時の屈辱を知る者として譲れないプライドがあった。


そんな私の気持ちを体現するようにモヤシ王子がボールを叩き込み、この日集まった18000人が一斉に雄叫びを挙げる。


緑の頃、一体感の欠片も無い寂しいスタンドの下でしかプレイが出来なかった彼らは
あの耳をつんざくような大歓声の中で何を思っていたのだろう・・・


そんなことは私には分からないし、もう仙台とは関係無い立場の人間だからどうでもいい。


ただ、あの弱くて市民から散々バカにされていたチームがここまで沢山の人の期待を一身に背負う存在になりましたよ。。。
様々な苦難を乗り越えてここまで這い上がって来た事を見せ付けてやれたのは良かったと思う。


緑の頃の苦しみが無駄ではなかったことを確かめられたことが何よりも私の胸を打ったのです。
リティはモヤシ王子の得点で、チームの伝統が確実に受け継がれているのが伝わるようで嬉しかったのかも知れませんね。


生え抜きの選手を大事にすることの意味を見たロスタイムのゴールでした。

*1:01.3.17 横浜FCのJ2参戦後初ホームゲーム。仙台1点リードで迎えた後半ロスタイム。真中が積年の怨みを吐き出すようなロングシュートが炸裂し同点に。ベンチの阪倉コーチの狂ったような喜び様も仙台に対する思いの何たるかを表しているようで背筋が凍りついた。試合はその後ノリヲの大チョンボまで飛び出してVゴール負け