新潟の春

いよいよ2004シーズン開幕まであと4日。この日を誰よりも首を長くして待ち焦がれているのは新潟のサポーターでしょう。
そんな思いを証明するように、開幕のFC東京戦、4・4の柏戦、いずれもビジター側のチケットが完売した模様。勢いを感じます。
初めてのJ1を目前にしてまるで遠足の前夜のようにドキドキ・ワクワク、楽しみで仕方ないのでしょう。


思えば2年前、私達も様々な紆余曲折を経てようやく辿り着いたこの未知の世界に足を踏み入れる興奮で胸を詰まらせたはず。
少なくとも私は「あの」仙台の選手が最高峰のリーグで試合をしていると思っただけでとても幸せな気分でしたね。
だから、今新潟の背中に羽根をつけたようなウキウキ気分が良く理解出来るし
2年前の自分の姿を鏡で見ているようで何だか微笑ましくも思います。


で、ここで新潟サポから異口同音に発せられるこの言葉

「今年もみんなの応援で勝たせるぞ!!!」

まぁ、好きなチームを応援で後押しする気持ちは痛いくらい分かる。その為に毎回馬鹿みたいに足を運ぶ訳だし。
ピッチとスタンドが力を合わせて新潟はJ2で結果を出して這い上がってきた。ここは素直に評価しています。
しかし、しかしである。サポーターの応援、熱意だけでは上のカテゴリーで勝ち続けるのは無理。間違いないです。
スタンドの雰囲気・サポーターの熱い応援で全てがどうにかなるというのであれば、
浦和はとっくに常勝チームになっているはずだし、仙台や札幌もこんなに落ちぶれてはいない。
逆に緑蟲や癌婆が今頃は地獄の渕をさまよっているべきだ。


確かに2年前、仙台開幕5連勝の陰にはサポーターの支えがあった。選手を鼓舞する本当に素晴らしい応援だったと今でも思う。
でもその後翌年降格するまで見事な下降線を辿り、この間55試合でわずか10勝。毎回ホームでは満員にも関らずこのありさま。


仙台に限らず札幌・新潟あたりは昇格するシーズンではホームで奇跡的・神がかり的な展開で勝利する試合が何度もあった。
確かに地元サポーターの声援がこの結末を演出したのは事実。
その証拠に97・00年札幌、01年仙台、03年新潟はホームでの勝率が非常に高かった。*1
そんな経験がサポーターの応援を必要以上に「神格化」させているきらいはあるのではないだろうか?
J1ではそんなささやかな「神話」「伝説」など木っ端微塵に叩き潰される情け容赦無い舞台ではあります。


サポーターの熱意は選手の心の支えにこそなれても技術的・戦術的プラスには成り得ない。
J1では応援の力が何のアテにもならないことを新潟の方々は思い知らされることでしょう。
それでも、彼らはスタジアムに足を運び、声援を送り続ける。そして決まってこう言う。

「新潟が好きだから」

昇格も降格も経験してサッカーにおける感情の起伏を一通り味わった今の私には到底吐けないセリフだ。
まだ鍛えられてないなぁ、と思う反面、どこまでも前向きに考えられるその純粋さは羨ましいですね。
今の仙台は昔のように一部マニア向けの玩具的な位置付けでは収まらないくらい大衆の注目を浴びる存在になったし、
勝手気ままに楽しめたあの環境が失われつつあって物足りない。
一般サポと私との間で求めているものの違いを感じている。
人が増えたら増えたでまた別の問題が出るし、難しいものです。

*1:97年の札幌はホーム15戦全勝